バガヴァッド・ギーター

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37日目+38日目

2010/08/09 21:55 [Mon]
昼の部の日記の前文出そうと思ってたら誤って消してたウォオーーーーイッ!!!!!

(XD)ミ


サマバケ昼夜はオリフィさんと、骨はルークさんとご一緒してました。
お付き合いいただき有難う御座いました、わぁーい。


私の
159.png

私の
161.png

オリフィさんの
160.png

昼の部のものはオリフィさんの日記にいったらあるので興味がおありでしたらそちらをご覧下さい。










【ひるのぶ】

夏の暑さを感じ始め、照りつける太陽に僅かな殺意を感じ始める。
探索者である人々が各々売りたいものを並べ小さなバザーを開いていた。
掘り出し物を探している最中、変哲も無い使い古したバケツとスコップが目に付いた。
バケツとスコップといえばアサリ取りだ、そうに違いない。いや、義務といっても良い。
妙な意気込みをしながら、ある事を思う。

”彼女”は海へ行った事があるのか?

「オリフィはまだ水着の方はお持ちではないのですか?
 まだでしたら、浴衣の時のように水着もご用意いたしますが?」

オリフィエルに海水浴へ誘うのは簡単なものだった。
頷いた後で、少し不安そうな表情を浮かべる。

「あ、はい。
 その、実は……海水浴は初めてですので、 どの様な支度をすれば良いのか分かりませんでした。
 テスにご迷惑をお掛けするかも知れませんが、よろしくお願いします。」
「そんなに畏まる事はありませんよ。
 それでは当日は、わたくしのお屋敷にいらして下さい。
 屋敷で着替えてから海水浴へ向かいましょう。」
「はい、よろしくお願いします。
 何もかもお任せしてしまって、申し訳ありません。」

様々な体験をさせたいという、”ただのお節介”に過ぎないのに。
畏まる様子を拭うよう頭を撫でた。

早朝は随分早いものだった。
丁度”海へ涼みに行きたい”と、同じ探索者であるアルテア・S・レイフロストが相談を持ちかけていた。
鏡の姿で水着を届け思わぬ土産を借り、戻ってくる頃にはオリフィエルが訪れていた。
先日のデートで彼女が着ていた、白のワンピースはとても印象深いものであったらしい。
自然彼女のつける水着を選ぶと白になっていた、それに彼女の好きな薔薇も飾りについている。
矢張り着慣れていないのか、気恥ずかしげな様子に微笑ましさも覚えついつい甘やかしてしまいそうになる。
日焼けを避けるため、シャツを貸し。お互い身支度を整え海へと向かう事にした。

「オリフィエル、海を見たのは初めてですか?」
「あ、はい。
 凍っていない海は初めてです……魔法陣を経由して島にやってきましたので。」

麦藁帽子にシャツにズボン、そしてバケツにスコップに首にタオルを巻く完全なアサリ狩りの正装で、オリフィの手を引き砂浜を歩く。
感嘆の声が耳に届く、視線をやると水平線に心を奪われた横顔が伺えた。
連れて着てよかった、思わず表情が緩む。

「……泳いでみますか?」
「はい。
 ところで……テスは着替え無くても良いのですか?
 その格好で泳ぐ訳では、ありませんよね?」

予想はしていたが、どう答えたものかと思わず苦笑をしてしまった。
幸いオリフィは持っている道具に興味を示したおかげであまり見られる事も無かったのだが。

「わたくしは……恥ずかしいので、肌を露出させたくないのです。」
「え、そうなのですか?私も水着姿は恥ずかしいのですけど……。」
「しかし、オリフィエルの水着姿はとても見たかったので
 わたくしの事は気にせず海水浴を楽しんでください。」

これは本音だ、彼女と共に時間を過ごす中で様々な姿を見た。
白のワンピースに浴衣、そして水着。
これからも着衣を用意することだろう。
……決してやましいものなんてありませんよ?

「あ、はい。
 浴衣も水着もテスに選んでいただいて、嬉しかったです。
 では、少し海の水に慣れておきますね。荷物、よろしくお願いします。」
「何、わたくしの自己満足ですから。
 喜んでいただけると、調子に乗ってしまいそうです。
 荷物のほう、承りました。気を付けてくださいね。」

ボタンを外し終え、帽子と共に脱いだシャツを受け取り海へと入る背を見送った。
太陽に照らされ輝く砂地に思わず目を細める。
荷物をまとめ、スコップで適当に砂地を弄ってみる。
アサリの他に、実はもう一つ目的もあった。
”星の砂”だ。もし見つかれば喜ぶかとも思ったが、どうやら淡い期待のようだった。
小さく肩を竦めていると、慌てたような声と同時、派手な水音が遠く響いた。


すぐにかけつけたため救助は容易であった。
水面から引き上げ具合を見る、僅かに水を飲んではいたが軽いものだった。
自然と安堵の吐息が漏れた。

「オリフィ、オリフィ……大丈夫ですか?」

すぐに意気を取り戻したオリフィは、まだ朦朧としているのかはっきりとしない声色で答える。

「あ、はい。 少し海の水を飲んじゃいました。
 実は私……ちゃんと泳いだ事がありませんでした。
 泳げない事を初めて知りました。」
「……泳ぐ環境がなければ気づきようがありませんね。」
「……こんな事なら沐浴の時にでも、泳ぎの練習をしておけば良かった。」

思わず視線が遠くなる、それに反してオリフィは申し訳が無さそうに、視線をそらしていた。
泳ぎに関しては予め予想はしていたが、まさかこんな派手に沈むとも思っていなかった此方の落ち度もある。

「あ、もう大丈夫です。 だいぶ落ち着きました。
 ……テスをびしょ濡れにさせてしまってすみません。
 あと、あの……降ろしてもらっていいですか?」
「あらかじめ予想もしていた事なので大丈夫ですよ。
 それなら今、練習してしまうのは如何でしょう?
 こう濡れてしまっては水着の心配も御座いませんし、ね。」

要望通り膝裏に差し込んで腕を抜き、立たせようとする。
その代わりもう二度と溺れさせないよう、胸元へと抱き寄せた。

「あ、はい。
 そうですね、練習したら泳げるようになるかもしれませんよね……
 テーセウスさん、ご指導よろしくお願いします。」
「そんな畏まらなくても結構ですよ。
 いつものように“テス”と呼んで頂ければ、ね。」

まるで始めてあった頃のような呼び名だ、少し前の筈だが随分昔に感じるのは何故だろう。
柔らかな砂地を蹴り、深い海へと身体を預ける。
飲み込みが早く、身体を浮かせる事から泳ぎに至るまではすぐだった。

「ここまでくれば十分でしょう。
 よくできました。」

見れば海岸は既に遠い。

「あはー、泳げない事も知りませんでしたが、自分がちゃんと浮く事も知りませんでした。
 こんなに早く上達したのは、テスのご指導が優秀だったからですね。」
「褒めるのがお上手だ。オリフィエルの飲み込みも十分早かったですよ。」

彼女はまだ進む泳ぎしか覚えていない、一度休ませるために抱き寄せ顔を覗き込む。

「まだテスが傍に居ないと不安ですけど、泳ぎに自信がつきました。
 もう少し練習して、テスと一緒に泳げるように頑張ります。」
「おや?ご一緒に泳いでいただけるのですか?
 ……人気の無い、夜の海であれば喜んで。」

夜には理由があった、悪魔ゆえの活動のしやすさと自身についた古傷の痕跡を見せないため。
後半は人気が少ないという理由で譲歩しよう。
彼女は頑張ったのだ、自分と泳ぐ為に。

「あはー、ご褒美をいただいてしまいました。」
「頑張る子の当然の権利です。
 少し疲れたでしょう。一旦浜辺に戻りましょう。
 帰りは私が泳ぎますよ。」

いまは期待に応えられない、代わりに口付けという形にした。
以前よりも少し成長したのか、恥じらいながらも笑顔を浮べたオリフィエルがいた。

岸辺へと帰る途中、腕の中でオリフィが何事か呟く。

「夜も褒めていただけるように頑張らないとですね。
 テスと一緒に泳げるように。」
「注文が多くてすみません、夜の方が矢張り“悪魔”としては活動しやすいですので
 ……ところで、今日1日で泳げるようになる気ですか?」

普段年寄りを相手にしていたせいで。
バイタリティの違いに驚き思わず顔を覗き込んでしまう。

「あ、すみません!?気が早すぎました!?
 少し練習してから一緒に泳ぎたいと思います!
 オリフお姉さんも泳ぎを教えてくれるかもしれませんし!」

何故か動揺しているオリフィエルを不思議に思ってしまったが
以前の島で世話になった人物の名前が浮かび思わず其方の話題を拾ってしまう。

「水に浸かっているだけで疲労は溜まるものですから、そう急がずに。
 オリフ様……彼女が此方に来られているのですか?」
「あ、はい。オリフ姉様もこちらにやってきています。
 何でも、個人的に調べたい事があるとか……私の事も心配して見に来てくれたようですけど。
 近いうちにテスをオリフお姉様に紹介しないといけませんね。」
「調べたい事ですか……なんでしょうね。
 しかし、心配してきてみたら貴方が分裂していたなんて事態、さぞ驚きになられるでしょうね。
 オリフ様には一度ご挨拶させていただきたい所です。」
「はい、その時は私の方からテスをオリフお姉様に紹介しますね。
 きっと、オリフお姉様も喜んでくれると思います!」

足が届く所までくれば、抱き寄せていた身体を離し立たせてやる。
海水を掻き、ゆっくりと海を出れば衣類が肌にべったりとひっついていた。

「是非宜しくお願いします……余程嬉しい様子ですね。」
「はい、嬉しいですよ、こんなに素敵な方をお姉様に紹介できるのですから
 ……その時は、今の服装では無くて、いつもの正装でお願いしますね。」

なんのことだろうかと一瞬、思考が止まってしまう。
海に入る前の井出達ならば、まさしくそれは――

「田植え前みたいな格好ですみませんね
 ……そういえば、麦藁帽子が遭難してしまったようです。まあ良い。」
「田植え……あ、はい。
 じゃなかった……ラフな格好ですと、オリフお姉様が難癖付けそうですので。
 無くしてしまった麦わら帽子はそうですね……お店を覗いてテスに似合うのをプレゼントします。」
「礼儀正しい方だとは思っていたのですが、難癖……ですか。」

以前の記憶によればとても礼儀正しい方だとは思っていたが、それ故に立ち振る舞いに厳しい方なのだろうかと真面目に考えてしまう。
しかし次の言葉に我に返る、今は彼女の事を考えているのが先決なのだ。

「おや、麦わら帽子をオリフィに選んでいただけるのですか?
 嬉しいですね。大事に使わせていただきますよ、勿論。」

軟い頬を撫でやり微笑む。

「あ、はい。ではこれから、海の家も覗いてみましょうか?
 運動して、お腹も空いてしまいましたし……テスの服も乾かさないと、ですし。」
「海の家ですか……良いですね。久しぶりに焼きそばを食べたかった所です。
 この気候ですから、服もすぐに乾くことでしょう。」

ニア 夜の部に続く



【よるのぶ】

空を映す水面は赤く、その1色にほどなくして青と黒が混じるだろう。
飾るものは小さな星々だ、地平線が遠くなればなるほど色を増す空に輝いている。
1日中、恋人の海水浴を見守り、時には練習に付き合えば既に時刻は夕方になっていた。
時の経過のもの悲しさを感じはしたが、これが最後というわけではない。
浜辺から大分と離れた、小さな孤島にある岩場にオリフィエルと休憩交じり景色を眺めていた。

「ここから見ると、向こうの岸が遠いですね……街の光が綺麗ですけど。」

景色に目を奪われた横顔を見る。

「1日でここまで泳げるようになった証拠、ですね。
暑い季節といえども夜は冷えます、もう少し此方に。」

腕を伸ばし、傍らのぬくもりを緩く抱き寄せる。
信頼しているのか、心地よい重さがかかった。

「あ、はい。
一緒に泳げて楽しかったです。夜の海も景色が綺麗ですね。
向こうの岸でピカピカ光ってるのは、花火……なのかな?」

遠く離れた浜辺で、小さな光輝いていた。
その一つが空を裂き、破裂音と同時花火が咲く。

「ちょうど月も出ているお蔭で、水面がよく映されていますね。
こういう夜も悪くないです……わたくしたちも花火を持ってくればよかったですね。」

「あ、綺麗……大きな花火ですね。
何かお祭りごとでもあったのかな?」

それだけが残念とばかり、肩を竦めて見せる。
が、オリフィエルはうちあがる花火に夢中のようだった。
これはこれでよいかもしれない。水面に水柱が上がる。

「……おかしいですね、お祭りのお話は聞いていないのですが。」

「……何か海に落ちたっぽいですね。
暗くて、良く見えませんでしたけど……何だろう。」

「……なんでしょうね、不発した花火でも落ちたのでしょうか?」

待てど水柱の主が現れるわけでもなく、気を取り直し景色を眺めなおす事にした。

「あ、花火も初めてですので、興味はあるのですけど……
 泳いで来てしまいましたから、花火を楽しむのはまた今度ですね。
夏は始まったばかりですから、焦らずに行きましょう。」

「またのデートは花火を楽しむ日……ですかね。
 それでは、色々なものを用意しておきましょう。」

返事はすぐには来なかった。
何か不味い事を言ってしまっただろうか。
顔色を伺うと何事か考えているようで、声をかけることに気がひけてしまう。
彼女の結論を待とうかと思った矢先、視線が合い。

「あの、前にテスのアトリエにお邪魔したいと言っていたお話ですが……
 その時、私の肖像画を描いて欲しいのです。ダメですか?」

突拍子も無い申し出に反応が僅かに遅れてしまう。

「……あ、是非、喜んでお引き受け致しましょう。
 しかし、その場合モデルをお頼みしますが、大丈夫ですか?」

「あはー、本当ですか?良かった、ありがとうございます。
 モデルはもちろん、喜んでお受けいたします。
 テスのお時間の空いている時間で結構ですので、お願いしますね。」

「貴方のお暇なときで結構ですよ、此方は自営業なので時間はいつでも作れますので。
 いつか描きたいと思ってはいたのですが……まさかこんな早い形で描ける機会がくるとは、思いもよりませんでした。」

彼女とまたこうした時間が過ごせるという事だろうか。
それは喜ばしいことだ、素直な気持ちを口にする。
途端彼女は俯き表情を隠してしまう。

「……はい。
 時を止める事はできませんから、せめて絵にだけでも今の私を留めておいて欲しいと思いまして。」

肩口にかかる温もりは心地良い。
相変わらず表情を隠すオリフィエルの機嫌を行動で伺う。

「今のオリフィを、ですか?
 ……わかりました、が。なんだか急いでいるようですね。」

「実は最近、テスと一緒にいる時間が増えて、私のテスに対する想いが日に日に強まっていくようで……
 自分の心が変わってしまうのが、少し恐いんです。」

彼女の言葉は漠然としているが不安こそは伝わる。
だが彼女のいい終わる言葉を待ち、さわり心地の良い長髪を撫でやった。

「あの、だから……
 もし変わってしまっても、今の私を思い出すために、テスが愛してくれた私の絵を残したい……って。
 変ですか?」

臭い言葉かもしれないが、昔 誰かが言っていた「恋は盲目」という単語が浮かんだ。
原因は自分であるなら彼女に直接手を差し伸べてもなんの解決にもならないだろう。
彼女の選ぶ選択は自身にとって最低限、最上限の助力なのかもしれない。

「自我を思い出すのは様々な方法があります、決して変などとは思いませんよ。
 貴方が貴方であるために必要なのであれば、喜んで協力いたします。」

漸く顔を上げる彼女へと緩く微笑みかける。

「はい、ありがとうございます……あの、絵が完成したら……

 な、何でもありません。
 その時、改めてお礼をしたいと思います。」

言いかけた言葉は、彼女自身が口を塞いだ事により途切れてしまう。
なんだろうか?

「おやおや……一体なんのお礼でしょうかね。
 オリフィのお礼と聞いて、俄然やる気が沸いてしまいました。」

彼女のお礼であればなんだって嬉しい。
思ったことを口にしたが、表情に出てしまったかもしれない。

「……あ、あの。お礼はあまり期待しないでくださいね?」

変にプレッシャーを与えたようで、オリフィエルは不安気に言う。

「ふふ、おかしな子ですね。
 オリフィエルから頂ける者であれば、なんだって嬉しいですよ?
 お菓子でも。ケーキでも。」

真っ先に浮かんだ言葉を口にする。
最近よく話をするようになったレーレ氏にも"年なので発想が貧困になった"とは言ったものの
本当に年をとってきたのかもしれないなとぼんやりと思った。

「あ……ええと、はい。
 ティーブレイク用のお菓子は、此方でご用意させて頂きますね。」

ズレた返事だったのだろう、オリフィエルも最初は戸惑った様子だったがすぐに此方のペースにあわせ頷き返事を寄越す。

「楽しみにしております。
 我慢はしていたのですが、どうも甘味中毒が再発したようで。
 オリフィの作るお菓子がなければ、生活できない勢いです。」

半分本当のことを言う。

「テスが甘いものが大好きなのは意外な発見でした。
 男性のかたが、甘いものが大好きと言うと、なんだか可愛いですね。」

「女々しい所だと自覚はあるので、あまり出さないようにしていたのですが……ね。
 しかしこんな大の男に可愛いは無いでしょう。女性に言った方が喜ばれると思いますよ?」

「はい。ですから、テスの意外な一面を見ることができて、嬉しいです。
 テスに可愛いって言えるのは、私だけだといいな……なんて。」

その言葉に、悪戯心が角を出す。
すぐ傍にある彼女の耳元へと唇を寄せ、囁く。

「食べてしまいたいほど、貴方は可愛らしい。」

「あ、え!?ええぇ!?
 私を食べても、あ、甘くなんてありませんよ!?」

えらく驚いた後、慌てて手を交差させて否定をする様が面白く思わず噴出してしまう。
笑うことも失礼だと思ったが、我慢しても肩が震えてしまった。

「……やあ、食べてみなければ判らないじゃないですか
 "女の子は砂糖菓子で出来ている"とも言いますし。」

「え、そんな言い伝え、何処にあるんですか!?
 お菓子でなんて出来ていません。
 確かに甘いものは好きですけど、ちゃんと我慢する時は我慢していますし!?」

「お菓子を我慢するなんて、オリフィエルは偉いですね。
 よしよし。」

自分とは正反対だ、彼女の爪の垢でも今度貰っておこうか。
子供をあやすようオリフィエルの頭を撫でてみせ。

「それでは、ためしに味見でもしてみましょうか?」

「うひぁ!?」

すぐ傍にある耳たぶを軽く食めば、相当驚いたのだろう
裏返った悲鳴をあげて飛び上がってしまう。

「うん……矢張りオリフィはとても甘いですよ。」

「あ、ちょ!?それ、くすぐったいです!?え!?
 甘いだなんて、そんな馬鹿な!?」

「ほほぅ、くすぐったい、ですか……覚えておきます。」

悪戯が過ぎたかもしれない。
口を離し、傍のぬくもりを抱きしめなおした。

「……可愛いと言われるのは嬉しいですが、あまり驚かせないでくださいね。
 これでも、心臓はドキドキしてしまうのですから。」

「悪戯は程ほどに、心得ております……先ほどのように“味見”したのもドキドキされましたか?」

「からかっていらっしゃる事は分かっていますが、その……くすぐったい所は、ずるいです。」

愚問だったようだ、腕を少し抓られてしまった。
先程の仕返しにしては酷く微笑ましく感じてしまう。

「嗚呼、すみません、いたいいたい。
 愚問で御座いました、よくわかりました。」

そんな戯れに水を差すものがあった。
実際にオリフィエルの頬に当ったのは雨水だが。

「……あ、雨。」

見上げると空は薄暗くなっている。
ぽつぽつと大粒の雨を零し始め、ほどなくして大雨になるという予想はつく。
どうしようかといったように此方の顔色を伺うオリフィエルを見て、岩場から立ち上がり手を差し伸べた。

「不味いですね、このまま降ってしまうと、帰りが遅くなってしまいますね。
 どこか……雨をしのげる場所を探しましょう。」

「あ、はい。夏とはいえ、雨に降られてしまうとあとで風邪を引きそうです。
 何処か、良い場所が近くにあれば良いのですが。」

「……もう一口欲しい所でしたが、いまは雨宿りする事が先決ですね。
 残念、残念。」

彼女の手を引きながら答えると、何故かまたやや裏返った声色で返事が返ってきた。

「そです、そうです。雨に濡れない方が先決ですよ!?
 本降りになる前に、急ぎましょう!」

振り返ると先程噛んだ耳を押さえていた。
少し強く噛みすぎたのかもしれない、謝っておこうと思った矢先。
雨を凌ぐにはちょうど良い洞窟が目に入る。

「そういえば、シャツも帽子も海岸でしたね。
 おや、洞窟が……ここで雨を凌がせていただきますか。
 雨でいっそう暗い、足元にご注意下さい。」

オリフィエルへと注意を促し、洞窟へと足を運んでゆく。

「海岸の荷物も無事だと良いのですけど……あ、本当だ。
 雨を凌ぐのには良さそうですね。あ、はい。滑らないように気をつけます。」

暗がりには慣れているが相手は慣れていない。
引かれている手は、慎重に歩いているのかやや硬い。

「聊か暗いですが、ここなら大丈夫そうですね。
 丁度座れる場もある事です。オリフィエル、少し暗いですが我慢できますか?」

「少し冷えるかもしれませんが、ずっと立って居るよりマシですよね。
 泳いで帰る体力を保つためにも、少し休憩いたしましょう。」

辺りを見回しているのか空気が動いているのが肌に伝わる。

「……暗い所は少し不安ですけど、テスが傍に居て下されば大丈夫です。」

「……暗闇はわたくしの庭に御座います、ご安心下さい。」

丁度腰掛けるのに最適な岩を見つけ、示すよう触れさせる。
手探りで腰掛けるオリフィエルを支え、自身も其処へと腰掛けた。

「テスは暗視ができるのですね、凄いです。
 風の流れから行くと、暫く雨は続くかもしれませんね……海も荒れてしまうかも。」

「オリフィは風の流れを読めるのですか?
 素晴らしいですね……では、帰るのも当分先になると、ふむ。」

「はい。風の流れを読んだり、マナを感じたりする事は得意なんですよ。
 風を読む事には自信があるのですけど、空気が読めないのは何故でなんでしょうね?」

「風の流れと空気を読むのは意味合いが違うからではないでしょうか。
 わたくしも風霊は開花できませんが空気読みは技能習得しとう御座います。」

オリフィエルの分身である鏡について、そして自身の以前の主人について話をした。
次は何の話をしようかと考える中、目が慣れてきたのか視線が合う。

「……あの。今更の話で恐縮なのですが、私とテスは……契約者と従者の関係……となるのでしょうか?
 私はテスの事をそのようには思ってませんが、確認の為にお聞きしたいのですけど?」

「オリフィエルが望むのなら、そのような関係にも出来ますが……お嬢様?
 なに、そういうものは立場的な関係に過ぎませんから、お気になさらずとも。」

「あ、いえ。あくまでも確認ですから“お嬢様”などと回りくどい言い方はやめて下さい。
 あ、はい。気にはしていないのですけど。」

彼女の世話が出来るならば本望だが、本人はそうは思っていないようだった。
顔が近付き、宝石のような紫と紅の瞳が伺える。
彼女の瞳にはどんな色を混ぜて作ろうか、そんなことをぼんやりと考える。

「もし……私がテスに命令をしたら、言う事を聞いてくれますか?」

「承知いたしました、愛しのオリフィエル。
 命令……ですか?勿論お聞きしますよ。契約をしているのですから。」

「あ、それでは愛……」

言いかけたところでオリフィエルは、我に返ったように慌てて始める。

「え、どうして思ってる事が分かっちゃうんですか!?
 ま、まだ命令してないのに!?」

愛情表現のつもりだったが彼女にとってはそれだけでも十分のようだ。
酷く動揺しきった顔に微笑ましさを覚え、からかい半分に言う。

「顔に書いてありますよ?」

「え、嘘っ!?顔に書いてあるわけないじゃないですか!?
 ええと、じゃあ……次に私が命令しようとした事を当ててみてください……って、ああ、もぅ!?」

愛しさのあまり動揺しきった彼女を抱きしめると慌てた声が更に上がった。
かろうじて見える耳元が真っ赤になっている辺り、相当恥ずかしいのだろうか。

「これも勿論顔に書いてありました、嘘では御座いません。
 少し身体が冷えてしまっていますね……
 わたくしで暖を取ってくださってもかまいませんよ?」

「あ、その……確かに身体は冷えてしまっていたかもしれませんけど
 そっちはでなくて、私がテスにお願いしたかった事は―」

気づけば随分顔が近い、顔を赤くしたまま言葉は勢いを無くし小さなものへとなっていった。

「……あ、の……その……

 あ、いえ……もう十分です……これ以上の事は望みません。」

本当にそれでよいのだろうか?
続く言葉を考えるなら恐らくは、きっと――

「先ほどのお話を戻すのですが。


 砂糖菓子のように甘い貴方を、食べてしまってもよろしいでしょうか?」

顔を近づけ囁くと、酷く驚いた息遣いが伝わる。

「……!?」

「食べるって……ええとそれは……その……どういう!?」

「それは勿論言葉の意味そのままですが?
 あ、カニバリズムでは御座いませんよ、勿論。」

「あ、の……ええー!?」

顔を真っ赤にさせて言葉も思いつかない酷い狼狽っぷりに、さすがに申し訳なくなってしまう。
故に冗談という事で流す事にした。

「……なんてね、冗談です。」

「え、うそ!?そんな!?
 じゃなかった?そうですよね!?」

微妙に残念そうな声が聞こえたが、オリフィエルは何故かラマーズ法で落ち着きを取り戻そうとしているようだった。

「ええ、勿論。
 嘘ですとも。ですが……帰ったら、こちらの屋敷の方でもう一泊、されてゆきませんか?」

「もう……テスは冗談が過ぎますよ。
 え、もう一日……ですか?」

「此処で休んだ所で、疲れは抜けきらないでしょう。
 一度お屋敷の方で静養いたしましょう。」

「……はい。」

迷う様子を見せていたが、一つ返事で頷いた様子にほっと胸を撫で下ろした。

「お断わりされてしまうかと思っておりました、良かった……屋敷についたら風呂と食事をご用意いたしましょう。
 海水も洗い流したい所です。」

帰った後の準備を考えると気がめいるが、彼女のためと思えば苦でもない。

「ありがとうございます。
 では、今夜は帰れそうにありませんから、明日に備えてお休みしましょうか?」

「ええ、しかし風邪を引かないようお気をつけ下さいね?
 ……おやすみなさい、オリフィエル。」

しかしオリフィエルは眠らず、じっと此方を見つめ。

「テス。おやすみなさいの前に……忘れていませんか?」

心地よい重みが体にかかる、宝石のように綺麗な瞳に見つめられ自然に笑みが零れてしまう。
顔を近づけ囁くように彼女へと謝罪をする事にした。

「おやおや、わたくしとしたことが。
 申し訳御座いません。」
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